強制不妊訴訟 不当判決にともに立ち向かうプロジェクト

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旧優生保護法の被害者に補償をする法律(「一時金支給法」)について

このページでは、2019年4月24日に制定された、強制不妊手術の被害者に対して補償を行うとする、旧優生保護法の被害者に補償をする法律(いわゆる「一時金支給法」)についてみていきます。

 

〇「一時金支給法」の問題点について

2018年に被害者の1人が国を相手に裁判で闘うことを決意したことがきっかけで、全国20人の被害者がともに闘うと声を上げました(2019年10月時点)。裁判が全国で始まったことを受け、2019年4月24日に初めて、旧優生保護法の被害者に補償をする法律(いわゆる「一時金支給法」)が国会で成立しました。しかし、この一時金支給法は被害を十分に補償するものとはいえません。問題点として次のようなことが挙げられます。

 

・法律の中で謝罪をしている主体が「国」ではなく「我々」であり、責任が曖昧なこと

→優生手術をすすめてきたのは政府や国会であり、法改正後に被害の保障や実態調査を行ってこなかったのも政府や国会です。「「我々」は主に政府および国会」と説明されていますが、そうであれば法律に明確に書くすべきです。

 

・被害者が請求をしなければ一時金が支給されないこと

→被害者の中には、障害があり、自分で申請をすることが難しい人もいます。また、自分が被害者だと知らない人もいます。国は、一部ながら当時の記録を保持していて、手術の対象となった人を知っているのに、その人たちに補償を積極的にしようとしていません。都道府県単位では被害者への個別通知を実施しているところもあります。国はこのような態度を見習い、十分にプライバシーに配慮するのは当然として、個別通知を行うべきです。

 

・一時金支給の対象が限定されていること

優生保護法が障害者差別だったという周知や啓発が行われなかったため、1996年に優生保護法がなくなった後も、障害を理由とした不妊⼿術や中絶、放射線照射や⼦宮摘出が行われていたおそれがあります。このような被害者にも補償を行えるように手術された期間の限定を外すべきです。また、優⽣保護法第14条1項1,2,3号に基づく優⽣上の理由による⼈⼯妊娠中絶の被害者も謝罪、補償としての一時金支給の対象とすべきです。

 

・一時金が僅か320万円であること

→被害の大きさや、被害者の受けた心や体の苦痛を鑑みると、低すぎる金額です。日本における交通事故の賠償の基準では、子どもをつくれなくなった場合の賠償は1000万円です。故意の場合は3割増が可能とされ、被害の放置なども増額の理由となります。それと比べると、やはり、320万円は人権侵害の大きさに対して低すぎる金額と言えます。これでは、政府は被害者に対する人権侵害を軽く見ているといわれてしまいます。

 

 現在の一時金支給法には上に述べたような多くの問題があります。これでは被害者に対して十分な補償はできません。2019年9月末時点で一時金の支給が認められたのはたったの138人です。このままでは多くの人が補償を受けることができないままになってしまいます。国が本当に誠意をもって被害者と向き合うならば、被害者が納得できるような法律に直すべきです。手術された人は年を取ってきているので急がなければなりません。

一時金支給法の第21条で「調査その他の措置を講ずる」として、優生手術について調査を義務付けたことは、同じ間違いを繰り返さないためにとても大切なことです。しかし、2018年に行政、各医療機関福祉施設などに対して行われた調査は、とても不十分な内容でした。一時金支給法の下でこのような不十分な調査を追認することにならないようにすべきです。しっかりと調べるだけでなく、あやまちをくりかえさないために、資料を集めて保存する必要があります。国や都道府県の資料はもちろん、できれば個人や医療機関福祉施設などがもっている記録なども大切に保存できるとよいと思います。