強制不妊訴訟 不当判決にともに立ち向かうプロジェクト

 Twitter:@confrontproject E-mail:confront.project.tohoku@gmail.com

院内集会・プロジェクトからのスピーチ全文

院内集会にご参加いただいた皆様ありがとうございました。

国による謝罪と補償につながることを望みます。

プロジェクトからのスピーチを全文公開します。当日、時間の関係で話せなかったところもありますので、ぜひ読んでください。

 

※写真は毎日新聞「差別のない社会を」 強制不妊被害者救済 東北大生、署名提出 /宮城 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

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♢仙台からのスピーチ♢
「強制不妊訴訟不当判決にともに立ち向かうプロジェクト」の鴫原宏一朗(しぎはらこういちろう)と申します。仙台の大学に通う大学4年生です。
このプロジェクトは2019年5月28日、仙台地裁の判決で原告の飯塚さん佐藤さんの請求が棄却されたのを受け、これは許してはいけないと、もっと多くの人がこの問題を知り、取り組み、国の責任を追及しなければならないと思い、仙台の大学生が中心となって始めたプロジェクトです。
飯塚さん、佐藤さんは裁判の期日の度に、手術の被害について、その手術によって人生にどのような影響を受けたのかを話してくださいます。とても凄惨です。
にもかかわらず、仙台地裁は、国は被害を回復する法律を作ることは必要不可欠であったが、必要不可欠だということが国会にとって「明白」ではなかったから、国に責任はない、手術からすでに20年がたってしまったので、損害賠償を求めることができないと結論しました。国は責任を認めないまま、一時金として320万円を渡し、それでおしまい。被害を受けても、社会が障害者に対して極めて差別的であるがゆえに声を上げることができず、その差別を国が法律で根拠づけ、後ろ盾し続けてきたのです。差別を促進する法律が1996年にようやく改正されても、20年もの間、被害を放置し、国の責任はよくわからない法律の論理で認められない。
こんなことがあってよいのか。社会正義の観点から、決して許すことはできません。
私たちは国への抗議として、今回提出する署名を始めました。
紙とオンライン合わせて16303筆が集まりました。このうち15000筆ほどが紙署名で、全国の障害者団体、支援団体、個人の方々からのものです。
全国のみなさま、改めまして、ご協力ありがとうございました。
この署名は、旧優生保護法による強制不妊手術、障害者差別、そして国がずっと行ってきたすさまじい人権侵害に対して責任を認めずに逃げ続ける国家に対する、日本中に住む署名を書いてくださった、そして、すでにその多くが亡くなっている、強制不妊手術を受けた被害者の方々、一人一人の万感の怒りを込めた意思です。今話を聞いている議員の方々はしっかりと受け止めてください。
仙台からは以上です。

♢東京からのスピーチ♢山﨑睦子、池澤美月

( )内は、時間がなくて話せなかったところです。
優生保護法は、過去の問題ではありません。今も国との裁判が続いており被害者の尊厳が回復されていないからというだけでなく、国が優生保護法によって煽動し社会に広まった優生思想が現在でも根強くのこっているからです。

(地域での生活を望みながらも施設や病院にいることを強いられている人が数多くいます。障害者施設での虐待や死亡事件は後を絶ちません。学校、職場、就職、街の中、日常の中で障害のある多くの人が日々、差別に苦しみながら生活しています。)

 (2016年の相模原障害者施設殺傷事件では、加害者が「障害者は生きている価値がない」「世界経済と日本のため」などと主張し、19名もの命を奪いました。国は、このようなヘイトクライムを許さないというメッセージを発することはありませんでした。優生思想を否定しない国の姿勢は、優生保護法に対する責任を負っていないことと地続きです。この事件の後も、優生思想をめぐる事件は相次いでいます。2018年には自民党杉田水脈議員が雑誌「新潮45」に同性カップルは「生産性がない」などと寄稿し、批判に対して新潮45は「見当外れ」と応答しました。2019年には、東京福生の病院で恣意的に人工透析が中止され女性が死亡しました。2020年、安楽死を望むALSの女性患者に頼まれ薬物による殺害を請け負ったとして医師2人が嘱託殺人容疑で起訴されました。この年、NHKスペシャルでは『彼女は安楽死を選んだ』という番組が放送されました。安楽死の議論が優生思想の基に活発に行われるようになってきているのは危険です。司法では、同年、交通事故で亡くなった聴覚障害のある女児の逸失利益が健常者の4割とされる差別的な判決があり批判を集めました。2020年には、れいわ新撰組の大西つねき氏が高齢者を対象に「命選別しないとダメだと思う」「その選択が政治」との発言をしました。今年のオリンピックに際しては、壮絶ないじめを行っていたことが明らかになった小山田圭吾氏に対して寛容な社会の反応が見られました。)
 
 (強制不妊訴訟でも論点になっているリプロダクティブ・ヘルス・ライツが制限される例は後を絶ちません。最近では、生活保護を受給する女性に、ケースワーカーが「妊娠は自立を阻害する」などと指導したことが明らかになりました。2020年12月には、ベトナム国籍の21歳の技能実習生が出産した子どもを遺棄したとして死体遺棄罪で起訴されました。妊娠を理由に帰国させられるのを恐れて妊娠を言い出せなかったという理由関わらず、罪に問われたのです。実際に、妊娠を理由に技能実習生が強制帰国させられる事例も起きています。少子化を理由に子どもを産むことを求められますが、一方で、女性の妊娠・出産がコストと見なされ制限されるということです。また、近年の出生前診断の普及は、優生思想のもとで良いとされない命を産まない選択を強いることに繋がっています。中国の新疆ウイグル族の女性が糾弾し続けている中国政府による虐待行為の中には強制不妊が含まれています。国家の権力は現在でも国家の発展のためと称して都合よくリプロ権を奪うのです。)

 現在の社会では、障害の有無に限らず、働くことができるかどうか、どんな性的指向をもつか、健康で労働生産性の高い子どもを自力で育てられるかなど、何らかの基準に基づいて「優れている」ものと「劣っている」ものに分けられてしまいます。既存の社会の仕組みに合った生き方をしたくない人やできない人の命は「生まれるべきでない」「存在価値が低い」とされています。
貧困者や障害者、発展途上国の人々は当然のように人権を侵害されてきました。介助、子育て、家事、介護なども含む「ケア」は、人間にとってとても大事なものであるにも関わらず、経済的な利潤を出すものではないからと、軽んじられ、女性に押し付けられてもきました。労働者は過労に倒れ、地球環境が破壊され、気候危機の時代に入りました。これらを生み出しているのは、経済成長や国家の発展を追求する資本主義社会です。

今の社会のあり方は、人間にとっても環境にとっても好ましくないのです。ケアをもっと重視し、地域で人々が支え合い、ゆっくりと暮らしていけるような社会のほうが、差別や抑圧がなく、地球環境を破壊することのない社会だとは思いませんか?
差別や貧困が広がり、社会が多角的な危機に面する今、社会を変えようと声を上げる若者たちが世界中にたくさんいます。優生保護法は、実態からみて凄まじい人権侵害でした。この問題と闘う私たちからも、現代の社会を問い直す闘いをつくっていきませんか?
優生思想や障害者差別に対して、わかりやすく「被害者」や「当事者」と言われる人の語りや闘いだけに頼らない運動をつくっていく必要があると感じています。日々の抑圧や被害と命がけで闘っている人々に連帯できるのかが全ての人に問われています。おかしいと思う人みんなで考え、声を上げましょう。